ダビデのコラム

トリノ&ミステリー11

Torre Littoria(リットーリアの塔)は、イタリアにおけるモダニズム建物の象徴としてでなく、トリノの居住ビルとしては最も高い建物として知られており、カステッロ広場からすぐのジョヴァンニ・バッティスタ・ヴィオッティ通り上、正にトリノの中心に位置しています。
そのそびえたつ建物は当初、1960年代にはRAI国営放送局の本部があった「12月18日広場」に建つ予定でした。しかし最終的に現在の場所になったのは、たぶんローマ通り沿いですでに開始されていた作業現場との兼ね合いと、それにもまして、すぐ近くのカステッロ広場に隣接しているサヴォイア王国時代のバロック様式の建物、つまりは王政主義の権力のシンボルに対しての密かなる反抗を示すものとして、その場所に落ち着いたのかもしれません。
建物自体は明らかに、ドイツで起こった"表現主義"に基づいたモダニズム建物のひとつの代表作となっています。
その建築が始まった当初は、革新的なテクノロジーを駆使し、最新の部品(ガラス・コンクリート、小型の硬質レンガ・リノリウム素材)を多く取り入れた、正に時代の先端技術を象徴するもので、イタリアにおいて高層ビル仕様の電気溶接製の支柱を利用して実現した建築物の"第一号"となりました。
そしてこの建物は、1800年代よりトリノの象徴で、尚且つこの都市で最も高い建物として、そして石造りの建築物としては世界で最も高いという2つの"第一号"の称号をもつ「la Mole Antonelliana(モーレ・アントネリアーナの塔)」と匹敵しうる重要な建物となったのです。
しかし多くの人にとってこの建物は、モダニズム建物としては最高の例ではあるのですが、上述したように、隣接するカステッロ広場に展開するバロック様式の建物群の、エレガントで規律のあるたたずまいとの調和に欠けたものであるという認識をされています。そんな理由でトリノの人達から、風刺的な色々なあだ名をつけられて呼ばれてもいます。その中のいくつかを挙げると、「dito del Duce(ムッソリーニの指)」「pugno nell'occhio(目障りなモノ)」「telefonino(電話機)」「torre arrogante(横柄な塔)」等です。
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