ダビデのコラム

オペラのしくみ

全9回のこのコラムも折返し地点の第5回。今回はオペラのしくみのお話です。

多くのオペラには序曲という、オーケストラのみで演奏される部分があります。もともとは開演前のざわついた客席の気持ちを、舞台へ向ける意味があったようです。序曲にはそのオペラの中で歌われる重要なメロディが盛り込まれたり、作品全体の雰囲気が凝縮されていたりして、幕が上がる前のわくわく感も高まります。それだけで独立して演奏会で演奏されることも多く、「フィガロの結婚」(モーツァルト)や「ウィリアム・テル」(ロッシーニ)のなどの序曲はとても有名ですし、「運命の力」「シチリア島の夕べの祈り」(いずれもヴェルディ)などは、吹奏楽での演奏機会も多い序曲です。

後の時代には、本編の開始と一体化した「前奏曲」といった形に姿を変えて作曲されることも多くなりました。

さて、いよいよ幕が上がって歌い手たちが登場!

オペラでは、基本的にすべてのストーリーは音楽で展開され、台詞にあたる部分にも音の高さやリズムを作曲者が記しています。これは、レチタティーヴォといって“叙唱”“朗唱”と日本語に訳され、歌うように話し、話すように歌われるものです。言葉のイントネーションをもとに作曲されていて、怒っているときには突然高い音が出てきたり、ため息には長い音が使われていたり、内緒話には低い音が使われていたりと、空の上にいる作曲家からの「こんなふうに演じてね!」というアドバイスを感じ取ることができます。もちろんその感じ取り方は人それぞれなので、演出家によって、歌い手によって、ステージの数だけ演技にも違いが出てきて、そこが面白いところでもあります。

そして歌!一人で歌う独唱部分と数人で歌うアンサンブル部分があります。

ひとりで歌う部分は「アリア」と呼ばれ、登場人物の高まる思いが吐露されます。有名な曲では、トリノ五輪でフィギュアスケートの荒川静香さんが金メダルを獲得した時の音楽。「トゥーランドット」(プッチーニ)の中の「誰も寝てはならぬ」というテノールアリアの名曲です。ちなみにこの五輪の開会式で「誰も寝てはならぬ」を歌ったのは、三大テノールの一人で大スターのパヴァロッティ。あの開会式が彼の人生最後のステージになりました。

アンサンブルでは、二人で歌うデュエットから多いものでは8重唱、9重唱…と、登場人物が増えればそれだけアンサンブルの規模も大きくなります。合唱はひとつのパートを複数人数で歌いますが、重唱はひとつのパートはひとつの役の歌い手が一人で担当します。ひとつの曲として美しいアンサンブルを奏でながら、それぞれに違う歌詞で別々の思いを歌っていることも多く、ひとつの舞台の上で悲喜こもごもの思いが同居する様子は、社会の縮図のようでもあります。

そして欠かせないのが合唱。時に村人、時に兵隊、時に城の使用人…。合唱が入ると音がぐっと厚みを増し、舞台も華やかになります。今回のKitaraオペラ「コジ・ファン・トゥッテ」でも合唱が登場します。地元声楽家や合唱活動をしているみなさんで編成され、先日初めての練習が行われました。写真はその時の模様です。

公演まで約1カ月。いよいよ仕上げの時期に入ってきました!!!

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【KitaraHP】http://www.kitara-sapporo.or.jp/event/?p=22310

文責: 小平明子


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